取引蔵元
【平井六右衛門】菊の司酒造・岩手県
【平井六右衛門】
岩手県盛岡市に蔵を構える菊の司酒造は1772年創業の岩手県随一の老舗蔵元です。地元向けの「七福神」「菊の司」などに加えて、蔵元ネームを拝した「平井六右衛門」シリーズは16代目蔵元の平井佑樹専務が2014年に立ち上げた新ブランド。まだ20代の若き俊英が抜群のセンスで醸すモダンテイストの美酒です。
すでに高い完成度をみる香味は、モダンな味わいを造るための創意工夫がそこかしこに施されているはずです。私は初めて六右衛門を飲んだ時に、もしかしたらどこかの有名蔵元の強い指導が入っているのではないかと思ったくらいに、香り・味わい・後口の全てが一定の水準を大幅に上回る高いレベルを感じました。しかし平井さんはそれを否定します。3年前に季節雇用の杜氏が引退して社員だけの酒造りへと転換して、社員だけでそれこそ米洗いひとつから全てを一から見つめ直して今のモダンテイストを造りあげたとのこと。「全くの素人集団だった」と振り返る平井さん。平井さん自身も酒造りは研修所で理論を学んだ後は実践のみ。とてつもないセンスと柔軟な吸収力に感服します。
醸造家は自分の酒造りに没頭しますが、同時に気になる他銘柄があるはずです。平井さんに聞いてみると、「而今」「十四代」という答えが返ってきました。なるほど、六右衛門の華やかな雰囲気は確かに両銘柄に通じるものがあります。 「私は少し華やかなタイプが好きなんです」と。そして而今の素晴らしさを、「甘みがジューシーなのに綺麗な酸が出ていて苦味の演出も素晴らしい」などと、ディテールまできちんと正確に掴んで評価していました。美味しい酒を造る人は必ず良いテイスターでなければなりません。「而今は目指さないでしょうけれど、例え熟成酒を而今が出すとなっても必ず高い技術を感じさせてくれると思うんです。そこに憧れます」と平井さん。人気銘柄の表面的なモノマネをしてしまう若い造り手もいる中で、味わいの本質を見抜いてその技術を吸収したいという強い意志を感じさせてくれる頼もしい言葉に嬉しくなりました。
平井さんは「岩手の風土を伝えたい」と言います。盛岡は本州で一番冬が寒いと言われているそうで、蔵の井戸に湧く軟水と県産米に限定した優秀な酒米と共に、その厳寒の環境から生まれるシャープな吟醸造りを表現したいと情熱的に語ってくれました。六右衛門の透明感はこの風土から生まれているようです。なお、豊かな風土はお酒のネーミングにも通じているようで、「稲波」「心星」「遊山」「盛流」など、自然をテーマに取り込んだ六右衛門の美しい命名は独創的でとても印象的です。
また、「前進している過程を見てくれたら嬉しい」という言葉もありました。いまスタッフ全員で切磋琢磨している菊の司酒造は、すでに美味しいお酒を十分に造っていると感じますが、本人達はまだまだ成長過程にあると自覚しているようで、改善を次々と加えていってどんどん酒質を向上させる意欲に満ち満ちていました。前途洋々。才能溢れる若き醸造家の美味に朧酒店も期待が高まります。 |
![]() 16代目蔵元:平井佑樹専務
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定番酒 |
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3,300円/1800ml
1,815円/720ml
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2,200円/1800ml
1,210円/720ml
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